琵琶湖の家
家族が年を重ねるように家も年を取って、表情を変えていく、そんな家が欲しいと
依頼されました。天然素材と本物のビンテージを使って最初から味のある空間を
作り、そして30年後50年後に珠玉の輝き、本物の燻し銀の光沢を醸し出すような
設計を目指しました。
天然素材を使うこと、家族が遊び倒せる家にすること。皆が安心して暮らせる家にすること。
私は多くの場合、パースは水彩画による手書きを出すことが多いのですが、
そういった「手作り感」が、ナチュラルでクラフト志向のクライアントに受けた
のだと思います。
建設地は滋賀県で琵琶湖を望むことが出来る自然溢れる場所なのですが、
この件では土地探しからクライアントと一緒に行ないました。
現地を一緒に歩いて見つけた土地を価格交渉まで一緒になって行ないました。
また工務店選びでも現地に飛んで私自身の感を頼りに決めていただきました。
鉄窓や木製建具の製作先も私自ら選定を行い、施主が支給する設備材料や
ビンテージの金物に至るまで、徹底的に調べ上げ、自分の目で見て手にとって
確かめて計画しました。
家を持ちたいと考えてから随分と色々な住宅メーカーや工務店などを巡りました。
そして私たちが影響を受けていたTRUCKという家具屋さんのデザイナー夫婦の
家作りを本多さんに紹介すると、必ずこのようにして差し上げますという力強い
言葉を頂きました。提案して頂いた素朴なパースや平面図が自分達が思い描いて
いたものにとても近かったことで、やっと理想の建築家に巡り逢えたと感じました。
私たちのわがままを適当に扱わないで真剣に対応してくださったことに、
とても感謝しています。
鉄窓を提案させて頂きました。プリミティブな素材を集めて経年劣化という味を楽しめるように考えました。さびた窓を大変に気に入っていただけました。これはコールテン鋼といって表面は錆を発生させますが、中までは腐らない鋼材です。
ビンテージ家具と新しく造作したキッチンが違和感無く溶け込むダイニング。
ダイニングとリビングは1mの高低差のあるスキップフロアになっています。敷地の形状を利用したものですが、この繋がりにより空間が間延びせず、景色も切り取られ雑然としたLDKにならずに済みます。また薪ストーブの熱が綺麗に循環して過ごしやすい空間を作り出しています。
薪ストーブと手摺は、ビンテージ。
100年以上前のフランスのビンテージドア。レバーは、もっと古い教会に使われていたもの。